一眼カメラの性能を理解する際に重要な要素が「センサーサイズ」です。これはカメラの性能や写真の質に大きな影響を与えます。初めてカメラを始める方にとっては、センサーサイズの違いがよく分からないかもしれません。
今回は、特に一眼カメラでよく使われる「フルサイズセンサー」と「APS-Cセンサー」の違いをわかりやすく解説します。フルサイズセンサーは高画質と自然なボケ味が魅力ですが、APS-Cセンサーはコンパクトさとコスト面で優れています。
自分のニーズや用途に合ったセンサーサイズを選ぶことで、カメラをより楽しんで上手に活用できるでしょう。写真の世界への一歩を踏み出してみませんか?
センサーサイズ
一眼レフやミラーレス一眼カメラを総称して「一眼カメラ」と呼びますが、これらのカメラには必ず画像を生成するためのイメージセンサーが搭載されています。写真は光の情報を基にして創り出されるため、イメージセンサーは光を受け止める重要な役割を果たします。
イメージセンサーのサイズはカメラによって異なります。例えば、フルサイズセンサーは大きなサイズを持ち、高画質と自然なボケ味が魅力です。一方、APS-Cセンサーやマイクロフォーサーズセンサーはコンパクトでコスト効率が良く、携帯性に優れています。
選ぶイメージセンサーサイズによって写真の表現やカメラの性能が変わるため、自分のニーズや撮影スタイルに合ったカメラを選ぶ際には、センサーサイズも重要な要素となります。
イメージセンサーによる違い
サイズの違うイメージセンサー、サイズの違いによって写真にどのような変化があるのか気になるところだと思います。
【画角、画質、使うことのできるレンズで違い】
イメージセンサーの違いによる写真の変化は非常に大きいです。同じ焦点距離のレンズを使用しても、センサーサイズの違いにより画角が異なります。また、センサーサイズが異なることで、光を一度に取り込むことのできる量も変わり、画質における階調の幅広さなども異なってきます。
さらに、センサーサイズに合わせた専用レンズも存在します。これらのレンズは特定のセンサーサイズに最適化されており、より高い画質やパフォーマンスを発揮することができます。
そのため、カメラを選ぶ際にはイメージセンサーサイズを理解し、自分の撮影スタイルや目的に適したカメラを選ぶことが重要です。イメージセンサーの違いは、写真の表現に大きく影響を与える要素であり、写真愛好家にとっては重要なポイントとなります。
イメージセンサーの種類
富士フイルムやRICOH PENTAXブランドの一部で展開されている中判サイズのイメージセンサーを除いて、一般的に一眼カメラで採用されているイメージセンサーは3つに分かれます。それぞれのイメージセンサーの特徴などを解説します。
フルサイズ
「フルサイズセンサー」は一般的な一眼カメラの中で最大のセンサーサイズです。このセンサーは、かつて35mmフィルムを使用したフィルムカメラでよく使われていたサイズに近いため、35mmフルサイズセンサーと呼ばれています。
フルサイズセンサーは製造コストが高いですが、生成される写真の質は他のセンサーと比較しても非常に高いです。そのため、一般的に中上位モデル以上の高級機に搭載されることが多い傾向にあります。高い解像度と優れた画質を求めるプロの写真家や写真愛好家にとっては、フルサイズセンサーのカメラは魅力的な選択肢となります。
APS-C
「APS-Cセンサー」は、デジタル一眼カメラの誕生時に新たに開発されたセンサーです。フルサイズよりも小型化されており、画質を極力落とすことなく、カメラボディの小型化や製造コスト削減に貢献しています。
初心者向けのデジタル一眼レフカメラなどに多く搭載されており、一眼カメラの中でも、最も多くのモデルで使われています。APS-Cセンサーは、優れた画質を提供しつつも、フルサイズセンサーよりもコンパクトなサイズでカメラを持ち運びやすくすることができます。特に初心者や趣味の写真愛好家にとって、手軽に高画質の写真を撮影できる魅力的な選択肢となっています。
マイクロフォーサーズ
「マイクロフォーサーズセンサー」は、APS-Cセンサーよりも更に小さいセンサーで、パナソニックとオリンパスのミラーレス一眼カメラのみに搭載されています。このセンサーは、ミラーレス一眼カメラの携帯性を維持しながら高画質を実現するために開発されました。
マイクロフォーサーズセンサーは、小型で軽量なボディにより、持ち運びやすさと撮影の自由度を高める特長があります。パナソニックとオリンパスが共同開発したこのセンサーは、優れた画質と高い性能を提供しつつ、一眼カメラの携帯性を重視するユーザーにとって理想的な選択肢となっています。ミラーレス一眼カメラの特殊なセンサーとして、独自の魅力を持っています。
フルサイズは中上位モデル
フルサイズセンサーは、一般的に各メーカーのラインナップの中で、ハイアマチュアやプロフェッショナル向けの中上位モデルに搭載されることが多いです。
その大きなセンサーサイズにより、一度に取り込むことのできる光の量が増え、情報量が豊富になります。これにより、写真の質が向上し、明暗差や色の階調に優れた描写が可能となります。
フルサイズセンサーを搭載したカメラは、よりクオリティの高い写真撮影ができるため、上級者やプロカメラマンに支持されています。豊かな表現力や高画質を求める方にとって、フルサイズセンサーは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
APS-Cは入門モデルや携帯性に優れたモデル
APS-Cセンサーは、一眼レフやミラーレス一眼カメラにかかわらず、初心者向けのエントリーモデルや機動性を重視したモデルに多く搭載されています。
フルサイズセンサーに比べて低コストで小型化できるため、フルサイズ搭載モデルに見られるカメラボディの巨大化を防ぎます。
さらに、デジタルカメラの特性に合わせたセンサー開発が進んでおり、十分な高画質と進化した性能を持っています。
初めて一眼カメラを選ぶ場合、APS-Cセンサー搭載モデルはコストパフォーマンスに優れた選択肢となります。使いやすさと高画質を求める方にとって、魅力的と言えるでしょう。
フルサイズとAPS-Cのちがい
フルサイズセンターとAPS-Cセンター、両者における違いについてここから紹介していきます。
同じレンズで画角が変わる
フルサイズセンサーとAPS-Cセンサーの最大の違いは、レンズ上での焦点距離が35mm換算で異なることです。
フルサイズセンサーでは、レンズ上で指定した焦点距離がそのまま35mm換算での焦点距離として反映されます。
APS-Cセンサーでは、センサーサイズが小さいため、レンズ上での焦点距離に1.5倍(キャノンの場合は1.6倍)をかける必要があります。
例えば、レンズに100mmの焦点距離を指定した場合、APS-Cセンサーでは1.5倍をかけて150mmとなり、フルサイズセンサーにおける150mmと同じ画角になります。これにより、フルサイズセンサーよりもAPS-Cセンサーの方が望遠撮影に有利と言えます。
望遠はAPS-Cが有利
フルサイズの画角から1.5倍に拡大されたものがAPS-Cセンサーを使用した際の画角になります。この拡大される画角を活かした遠い被写体の撮影には向いています。
望遠レンズになるほど、撮影時に感じるフルサイズセンサーとAPS-Cセンサーにおける焦点距離の差は大きくなります。例えば、600mmのレンズで撮影した場合には、APS-Cセンサーでは約900mmの画角を実現します。
このように、APS-Cセンサーはフルサイズセンサーよりも画角が狭くなるため、望遠撮影に優れていると言えます。被写体が遠くにあるスポーツや野生動物などの撮影において、APS-Cセンサー搭載のカメラは優れた選択肢となるでしょう。
上記のキリンの写真で使用したレンズはフルサイズ対応レンズで最大望遠距離は300mmです。このレンズをAPS-C機のカメラに合わせたので1.5倍した焦点距離の450mmとして使うことができました。
日中では画質の差は感じない
↑晴れた日中にAPS-C機のNikonD7000で撮影したキリン
↑晴れた日中にフルサイズ機のNikonD750で撮影したキリン
フルサイズセンサーは光の量を多く取り込むことができるメリットがありますが、日中の野外など光が豊富な場面では、その恩恵を十分に感じることが少ないと言えるでしょう。
近年ではAPS-Cセンサー搭載のカメラの性能向上が著しく、画角の違い以外でフルサイズセンサーとの差を感じる機会が激減しています。
APS-Cセンサーの進化により、高画質・高感度性能の向上や機能面での拡充が進んでおり、一般的な撮影シーンでもフルサイズセンサーと同等、あるいはそれ以上のクオリティを実現しています。特に初心者や趣味のカメラマンにとっては、コストパフォーマンスの高さや携帯性の良さから、APS-Cセンサー搭載のカメラが魅力的な選択肢となっています。
暗所撮影ではフルサイズが圧倒的有利
使用カメラ :NikonD750(フルサイズ機) レンズ:SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09 II) 露出プログラム:マニュアル シャッタースピード :30秒 F ナンバー:f 2.8 焦点距離 :28mm(35mm換算) ISO :200
光量が少ない夜間や暗い環境では、フルサイズセンサーとAPS-Cセンサーの違いが顕著に現れます。
フルサイズセンサーは、一度に多くの光を取り込むことができるため、光の少ないシーンでも高い画質を実現します。
夜間撮影や低照度の環境では、APS-Cセンサーよりもフルサイズセンサーのほうがノイズを抑え、よりクリアで精細な写真を撮影できる可能性が高まります。
特にISO感度を上げて撮影する場合、フルサイズセンサーの大きなピクセルによってより多くの光を受け取り、ノイズが少なくなります。
フルサイズセンサーの優れた撮影性能は、夜景や星景写真、室内撮影などのシーンで特に際立ちます。
ただし、夜間撮影でのフルサイズセンサーの優位性を活かすには、適切なシャッタースピードや絞り、三脚などの撮影技術も重要です。
素晴らしい写真を撮影するためには、環境やシーンに応じてセンサーサイズを理解し、適切に活用することが大切です。
APS-C専用レンズはフルサイズでは使えない
フルサイズセンサーは写真撮影において画質を高める優れた選択肢ですが、一方でレンズ選択には制限があります。
APS-Cセンサーを搭載したカメラが増える中、各メーカーはAPS-C専用のレンズを数多く提供しています。
しかし、これらのAPS-C専用レンズはフルサイズセンサー搭載モデルで使用することができません。
NikonではフルサイズとAPS-Cでマウントの互換があります。APS-Cセンサー専用レンズをフルサイズセンサー搭載カメラに装着すると、ファインダーの四隅に黒く描写されないケラレが発生します。
メーカーによっては、オートフォーカスや手ブレ補正機能が正常に作動しない可能性もあり、撮影に支障をきたすこともあります。
フルサイズセンサーを活用する際には、フルサイズ対応のレンズを選択することが重要です。
フルサイズ対応のレンズは大きなセンサーサイズに対応して設計されているため、高画質や優れた性能を発揮します。
レンズ選びにおいて、カメラのセンサーサイズを考慮し、最適なレンズを選んで写真撮影の可能性を広げることが大切です。
フルサイズ対応レンズはAPS-Cで使える
フルサイズ対応とされるレンズは、フルサイズセンサー搭載モデルだけでなく、APS-Cセンサー搭載モデルでも使用可能な汎用性のあるレンズです。
これらのレンズは、フルサイズセンサーに対応することを主な目的として開発されていますが、APS-Cセンサー搭載モデルでも使用できるように設計されています。
フルサイズ対応と書かれたレンズは、カメラのセンサーサイズを問わず使用することができるため、幅広いカメラボディで活用することができる優れたレンズと言えます。ただし、APS-Cセンサー搭載モデルで使用する場合は焦点距離に注意し、35mm換算での焦点距離を考慮して撮影する必要があります。
フルサイズとAPS-Cの違い・まとめ
・APS-Cセンサーでは画角がフルサイズセンサーの1.5倍(キヤノンは1.6倍)になる。
・フルサイズセンサー搭載モデルは中上位モデルが多く、APS-Cセンサー搭載モデルはエントリーレベルや機動性重視のモデルに搭載される。
・望遠性能を重視する場合、APS-Cセンサー搭載モデルがおすすめ。
・夜間など高感度撮影においては、フルサイズセンサーが圧倒的に有利。
・APS-C専用レンズは、フルサイズセンサー搭載モデルには使用できない。
・フルサイズセンサー搭載モデルのカメラボディは高価であるが、使用するレンズが制限されるため、機材の選択に注意が必要。
フルサイズセンサーは高画質と広いダイナミックレンジを持ち、プロのフォトグラファーにとって理想的な選択肢です。一方、APS-Cセンサーはコストパフォーマンスが高く、多くの場面で十分な性能を発揮します。
カメラ選びを行う際は、撮影するシーンや用途に合わせてセンサーサイズや機材を検討し、自分に合ったカメラを選ぶことが大切です。
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