写真撮影をする際に避けては通れない「カメラの設定」があります。主に関係してくる設定は「ISO感度」、「絞り値」、「シャッタースピード」の3つです。これらの設定を理解することで、頭の中で思い描いた通りの撮影が可能になります。
初心者の方にとって、これらの設定を理解することは大きな壁となることがあります。私自身もカメラを始めた頃、3つの設定を理解しようとして様々なウェブサイトを検索し調べましたが、要点をまとめたコンパクトな情報がなく、結局理解に時間がかかってしまいました。
そこで今回は、私が大切にするべきと考えるISO感度、絞り、シャッタースピードの3つの設定と、それらの関係性について解説していきます。
私の所有しているNikonのカメラで説明していきます。基本はキャノンやソニーも原理は同じです。名称などが違うことがありますが、参考になる記事になっています。カメラ撮影でステップアップしたい人はぜひチェックして行ってくだいさ!!
はじめに【写真は設定で大きく変わる】
普段何気なく撮影していることが多いですが、実は写真には色々な要素が組み合わさっています。
マニュアル設定で撮影を行うのはある程度の知識が必要です。
オート撮影はカメラがそれらを全て状況に合わせて適切な設定を行ってくれる便利な機能です。しかし、自動であるために自分の想像・イメージとは異なる仕上がりになることもあります。
このイメージ通りの写真が撮れないことでカメラや写真から離れてしまう人が多いのではないでしょうか??実際私もオートでカメラ頼りだった時は「自分のイメージの写真が撮れない」ことへのもどかしさから一度カメラから離れました。そして月日が流れて、もう一度カメラを勉強して撮影にチャレンジした経緯があります。実際に今、イメージ通りの撮影ができないで挫折しそうな入門カメラマンさんは、同じ壁にぶつかっているカメラマンがたくさんいることを知ることで「みんな同じなんだ」「これから勉強して乗り越えよう」と前向きにカメラ・写真に取り組んでみてください。
カメラそれぞれの性能を理解して自分で細かく調整できるようになれば、日々の写真撮影が楽しくなり、思い通りの撮影を行うことができます。
写真撮影は3つの要素で考えてみる
写真撮影を行う上で重要な要素は大きく3つあります。この3つの関係性を理解してしまえば、思い通りの写真撮影が可能となり、イメージに近い写真へと、どんどん近づけることができます。
後は撮影する頻度を上げていったり、企画を考えることで撮影スキルがアップしていきます。
ISO感度
ISO感度は暗さに対しての強さと言ったところでしょうか。
カメラ屋さんや家電量販店などで、カメラの商品POPを見ると必ず「常用ISO感度」という文字が目に入ると思います。
これは、「暗さにどれだけ強いか」を表す数値で、数が大きいほど暗いところに強いと言うことです。
「暗さに強いとはなにか?」というと、カメラを持って室内や夜で撮影する場合、周辺は暗く光量がありません。そこでISO感度を活用することで明るさを電子的に増幅させることができます。
明るさを増幅させることで、関係性の項目でも紹介しますが、シャッタースピードの低下を防ぐことができます。シャッタースピードの低下を防ぐことがで、夜間撮影の悩みとなる手ブレも防ぐことができます。
ただISO感度は便利な機能ではありますが「両刃の剣」でもあります。ISO感度は画質へ大きな影響を与える機能でもあり、上げれば上げるほど写真にノイズが発生(画質の劣化)します。
常用ISO感度が高いカメラは、ISO感度を上げてもノイズが少ないのでカメラ選びの際は常用ISOが高いものはオススメです。ただ最近のモデルであれば常用ISO25600などが一般的になっているので、最新機種であればそんなに気にしなくてもいいかもしれません。
ISO感度による画質の変化
上記の比較画像を見てどうでしょうか?ISO感度が上がると画質が劣化(ノイズが多い)しているのがわかると思います(ISO感度は数値をあげるほどノイズが目立ち、画像のディティール(繊細さ)を失う)。
2023年の現在では初心者向けカメラでも高ISO感度でも画質は改善してきている印象です。
個人の感想としてはISO6400を超えるとノイズが目立つカメラが多い印象です。ただSNSなどでスマートフォンの画面サイズで見る分では上限ISOから1段下げる程度なら使用レベルになる印象もあります。また、こだわった写真作品にすると言うことであれば、やはり三脚等を使用した【低ISO(ISO100~)】での撮影が好ましいでしょう。
各メーカー常用ISO感度
【キヤノン(Canon)】
- フルサイズ:Canon EOS R5 – 上限ISO感度: 51200(拡張: 102400)
- APS-C:Canon EOS R50 – 上限ISO感度: 32000(拡張: 51200)
【ニコン(Nikon)】
- フルサイズ:Nikon Z7 II – 上限ISO感度: 25600(拡張: 102400)
- APS-C:Nikon Z50 – 上限ISO感度: 51200(拡張: 204800)
【ソニー(Sony)】
- フルサイズ:Sony α7RⅤ – 上限ISO感度: 32000(拡張: 102400)
- APS-C:Sony α6600 – 上限ISO感度: 32000(拡張: 102400)
【フジフイルム(Fujifilm)】
- フルサイズ:Fujifilm X-T5 – 上限ISO感度: 12800(拡張: 51200)
- APS-C:Fujifilm S-20 – 上限ISO感度: 12800(拡張: 51200)
【パナソニック(Panasonic)】
- フルサイズ:Panasonic Lumix S1R – 上限ISO感度: 25600(拡張: 51200)
- マイクロフォーサーズ:Panasonic Lumix GX9 – 上限ISO感度: 25600
【オリンパス(Olympus)】
- マイクロフォーサーズ:Olympus OM-D E-M1 Mark III – 上限ISO感度: 6400(拡張: 25600)
主要カメラメーカーのミラーレス一眼カメラのフルサイズ機とAPS-C機を一台づつ選出して、常用ISO+拡張ISOを調べて記載しています。どのメーカーも通常使用用途では困ることはないほどの高感度性能になっている印象です。
絞り値(F値)
絞り値は【背景のボケを決める数値】と言ったところでしょうか。
少し説明すると、絞り値は「光を取り込む量、ピントの合う範囲を決める数値」です。レンズの表記や、カメラの設定画面では【F値】で表記されています。F1.8やF3.5、F5.6などがF値表記にあたります。
絞り値を小さくすればボケて、大きくするとクッキリ
F値の数値が小さいほど光は多く取り込めますが「ピントの合う範囲は狭く」なります。
F値の数値が大きいほど光を取り込む量は少なく「ピントの合う範囲が広く」なります。
そのため、ポートレート撮影などで背景をぼかした撮影を行う場合は、F値を低くします。絞りの最低値を「絞り開放」と呼びます。
【50mm/F1.8】と言うレンズの開放F値は【1.8】となります。カメラを初めて買う人が目にするであろうセットになっているズームレンズでは【28-70mm F3.5-5.6】と言った「28mmでは3.5」「70mmでは5.6」開放F値が変動するレンズも多いので注意が必要です。
絞りの最低値はレンズによって違います。レンズ性能において「開放の絞り値」というのも気にしておく必要のあるポイントです。
低いF値ではピントが合う範囲以外はボケた写真になります。ポートレイト撮影などにオススメです。
逆にF値を大きな数字にしていくと、くっきりとした写真に仕上がります。そのため、風景写真や集合写真などの撮影で必要な設定となります。
シャッタースピード
シャッタースピードは手ブレ・被写体ブレと言った【ブレ】に影響する設定です。
上記の比較写真は極端ですが「シャッタースピードが速い(1/1000など)とブレにくい、シャッタースピードが遅いとブレやすい(1/15など)」と言うのがわかりやすいです。
シャッタースピードは、「光を取り込む時間」です。シャッターを切る早さを1/30秒や1/1000秒などの値で表されます。この数値が高いほど被写体をブレなく撮影することができます。
逆にこの数値が低いほどシャッターを開けて光を取り込む時間が長いため、ブレが生じやすい撮影になります。
夜の撮影ではシャッタースピードが重要
夜間などの光量が少ない環境でオートモードでの撮影をすると、光を多く取り込むためにシャッタースピードが遅くなります。
シャッタースピード :1/5 F ナンバー:f 11 ISO :400
ISO・絞り・シャッタースピードの関係性
【ISO感度・絞り・シャッタースピード】それぞれの役割について解説しました。
写真撮影は、この3つの関係性を理解して、それぞれの数値を調整することが大切です。
ここからは【ISO感度・絞り・シャッタースピード】を組み合わせて使いこなすための撮影テクニックをご紹介していきます。
絞り(F値)を上げるとシャッタースピードが下がる
シャッタースピード :3/5 F ナンバー:f 8 ISO :400
大川家具メーカー:丸庄ファクトリーショールームにて(福岡県大川市)
説明:商品撮影での試し撮りの一枚。商品撮影のため、低ISOでF値は8で固定しました。すると後はシャッタースピードが下がって行きます。商品は止まっているのでもちろんブレませんが、シャッタースピードが3/5と遅くセッテイングしているスタッフさんが残像のようにブレています。
風景写真や集合写真を撮影する時に、ボケを少なく、全体的をくっきり写したい場合。先ほどご紹介した絞りを上げる事で対応することができます。
しかし絞りは「一度に光を取り込む量」でもあるので、絞りを上げる事で一度に十分な光を取り込めなくなってしまいます。そのためカメラは明るく撮ろうとシャッターを長く開くことで、光量を補おうとします。
シャッターが長く開くことで「シャッタースピードが落ちる」現象が発生します。
シャッタースピードが落ちると、シャッターが開いている時間が長くなる。シャッターが開いている間は、僅かな揺れでも記録されてしまうため、「手ブレ」が発生します。
また、シャッタースピードには限界があり、30秒~1/8000秒が一般的です。この範囲に収まらない場合は、写真が極端に明るくなったり、暗くなってしまいます。
シャッタースピードを上げると絞り(F値)は下がる
絞り(F値)を上げるとシャッタースピードが下がる
シャッタースピード :1/500 F ナンバー:f 2.8 ISO :1600
佐賀県;道の駅「大和」
説明:川を流れる水を止めて撮影するために、シャッタースピードを1/500まで上げました。明朝の撮影だったので薄暗くF値は2.8と明るいレンズを使用しました。
【絞りとシャッタースピードは常に関係性がある】
シャッタースピードを上げた場合は、光を取り込む時間が短く、十分に光を取り込めないため、絞り(F値)を下げて一度に取り込める光の量を増やします。
絞り値(F値)を下げると、光を一度に取り込む量を増やすことができるため、画像を明るくすることができます。シャッタースピード上げるなど調整することで適正な明るさへと設定することが可能です。
絞り(F値)にも限界値があり、限界値は使用するレンズによって異なります。重要になってくるのは数値の小さい開放側です。開放側の数値が大きいと絞りで対応できる範囲も狭くなります。
F3.5-5.6のズームレンズよりF4通しのレンズの方が全域でF値が変わらないので使い勝手がいい(=高価になる)。更にF2.8通しのレンズはF4より全域で明るい(=更に高価)。撮影するモノが決まっていて、焦点距離が決まっているなら「単焦点レンズ(F1.8など明るいレンズが多い)」は明るいズームレンズより比較的リーズナブルに購入することができるのでオススメです。
ISO感度は絞り(F値)とシャッタースピードの補助
絞りとシャッタースピードの関係性をご紹介してきましたが、撮影現場の状況(明るさなど)によっては、シャッタースピードや絞り値(F値)の限界を超えてしまうことも多いと思います。
例えば夜の撮影では、「絞りを落としてもシャッタースピードを上げられない」などの問題が発生します。このような場合に補助として活躍するのがISO感度です。
ISOはあくまでも【補助】として捉えるといいでしょう。かと言ってあまりシビアに考える必要もないと考えます。撮影するカメラマンが自分の中で許せるISO感度の上限を決めておけば、その上限値までは臨機応援に使っていいと考えます。低ISOじゃないと作品にならないと言う意見もありますが、まずはブレていない写真が撮れないと作品云々ではないからです。自分の中で許せるISOの上限を探してみてください。撮影が楽になりますよ。まだ許せるISOの上限値が見つからない人は「今持っているカメラの常用ISOの上限の半分の数字」を上限の目安にしてみてください。
シャッタースピード :1/40 F ナンバー:f 3.5 ISO :3200
説明:帰宅中に見えた日没。使用したレンズの一番小さいF値であるF/3.5(開放値)に設定しても、シャッタースピードが稼げなかったのでISOを3200まで上げました。夕方で光量も少なく手ブレしないギリギリのシャッタースピードは稼ぐことができました。
はじめに紹介した通り、ISO感度は暗さに対応するための設定です。絞りを落としてもシャッタースピードを上げられない時は、ISO感度を上げて夜景の手持ち限界シャッタースピードになるようにISO感度を見つけましょう。
さらに、ISO感度を上げることで絞り値も上げることができるようになりますが、ノイズもその分増え、画質が悪くなるので要注意です。ISO感度を上げるのは、単純にシャッタースピードや絞り値を上げたい時にも有効的です。
まとめ
【絞り値(F値)・シャッタースピード・ISO感度】の関連性について紹介してきました。最後に比較写真と合わせてまとめとします。
ISO感度まとめ
- ISO感度は、暗いところにどれだけ強いか決める数値(メリット)
- ISO感度は、数値が高くなるほどノイズが発生し、画質が悪くなる(デメリット)
絞り(F値)まとめ
- 絞り値(F値)は、ピントを合う範囲を決める数値
- 絞り値(F値)は、「光を取り込む量」を決める数値
- 絞り値(F値)を小さくするとボケる
- 絞り値(F値)を大きくするとくっきり
シャッタースピードまとめ
- シャッタースピードは、早いほど被写体ブレ・手ブレを無くすことができる
- シャッタースピードは、「光を取り込む時間」を決める数値
- シャッタースピードが速いと被写体を止める
- シャッタースピードが遅いと被写体が流れる
3要素の関係性まとめ
- 絞り(F値)を上げるとシャッタースピードが下がる
- シャッタースピードを上げると絞り(F値)は下がる
- ISO感度は補助 絞り(F値)とシャッタースピードだけでは対応できなくなったときにISO感度で調整する
- 絞り(F値)とシャッタースピードをどちらか上げたい時もISO感度を上げて対応◎
理想の撮影としては、ISO感度を小さく、絞りは開放でもなく絞り過ぎず(被写体に合わせた適正)、シャッタースピードも手ブレを抑えられる1/焦点距離以上でしょうか。撮影環境よって撮影設定は大きく変わりますが、3つの設定の関連性を考えて撮影できるようになると様々な撮影シーンで素早く対応することができるようになります。
参考にした書籍
カメラマン夫がカメラ任せのフルオートから卒業するために購入した書籍です。WEBではなく本屋さんで読みやすそうな本を選びました。
初心者・初中級者のカメラマンにオススメ。いろいろなシュチュエーションごとにカメラの設定を解説してくれています。作例も多く「まずは真似してスキルを付けていきたい」と言った人にもオススメ。
こちらもカメラの基本をわかりやすく作例付で解説してくれています。ボリュームも初めて読むカメラの本にはちょうどよく、カメラやレンズの紹介コーナーもあるので、今からカメラを始めたい人にもオススメです。
カメラを始めたいけど買う前に試したい人
一眼カメラと言うと、ハードルが高く感じる人も多いいのではないでしょうか?スマートフォンの登場で【写真を撮る】と言うハードルは低くなりましたが、カメラを買って撮影するのは勇気がいると思います。
そんな一眼カメラほしいけど悩み中の人にはレンタルで試してみると言うのもオススメです。
レンタル期間も短くていいでしょう。初めてのカメラであれば、まずはフルオートやフラッシュ禁止オートでカメラに任さえて撮影してみましょう。
フルオートの撮影での撮影が楽しめたのなら、購入を考えてみましょう。レンタルしてイメージと違ったなら、また欲しくなるまでスマートフォンで我慢できるでしょう。悩んでいるならまず、量販店に行くかレンタルしてみるかで「一眼カメラを手に」してみましょう。
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